画像処理を使った抽象化
この抽象度のオブジェと同じことをプログラムでやってみようと思い、以下のような装置を考えました。
ざっくり言うと、Webカメラで対象を撮影してPCに画像を取り込み、リアルタイムで画像処理をして、その結果を映し出すことで
抽象と具象を自在に切り替えられないかと考えました。その際、その抽象度は物理的なツマミをひねることで変えられると
手応えがありそうだと思いました。
そしてこれが作ってみた装置です。箱の中のクマのぬいぐるみをWebカメラ撮影しつつ、可変抵抗(青色のツマミ)の値をArduino経由で取得して、
その値によってリアルタイムにクマの映像を減色してみたものです。
上記の処理では単なる減色ですので、抽象化という印象はあまり感じません。
減色と抽象化の違いのイメージを下図に作りました。いろいろな角度で撮影したクマに対して、減色したもの、一番右はこうなるといいなという理想です。
減色と抽象化の違いのイメージを下図に作りました。いろいろな角度で撮影したクマに対して、減色したもの、一番右はこうなるといいなという理想です。
減色以外の色々な画像処理を検証するために画像処理フィルタをつくってどんな見た目になるかのテストもしました。
画像処理フィルタの実装はInterface2017年5月号の記事を参考にしました。
以下が元画像のクマのぬいぐるみの写真から色々なフィルタを掛けた画像です。画像認識、シルエット作成、エッジ抽出、代表色抽出などを組み合わせた一覧です。
造形のアプローチ
色々なフィルタを写真にかける試みの一環で、様々な角度で撮影したクマのぬいぐるみに対して、画像認識をしてみました。
下図がその結果なのですが、角度によってはテディベアが「揚げ物」だったり「ショウガ」だったりと誤認識されています。
確かに実際の写真を見ると似ているなとは思います。
この状況から先に進めようとすると、工学的なアプローチでは
「どの角度で撮影したものでも「テディベア」と認識できるようにがんばる」
と考えがちなのかなと思います。ですが、卒業制作の授業の場でその話をした所
「見る角度によって違うものに感じるは面白い。例えばテディベアを揚げ物の角度に見えるに映して、それを本物の揚げ物に切り替えて、それをさらに
別のものに見える角度に切り替えて…という動画とか作れるね。」
という話が上がりました。
工学のアプローチと造形のアプローチで一番違うのは人の前提の違いかなと思います。
工学は「地球上のどんな人間でも変わらない」が基本だと思いますし、
造形は「性別、年齢、地域、趣味嗜好によって違う」が基本だと思います。
だからこそ、造形のアプローチでは人がどう感じるか、そして多種多様の人の中で共通する認識は何かをとても大事にしていると思います。
まとめ
このように色々試したのですが、大きな問題として
- 抽象化と減色はまた違う。抽象化と言ってもその方法は様々であり、1軸上に並べられるものではない
- 抽象化には背景に人の意志が介在している、どこを省略し、どこを誇張するかは目的によって異なる
がありました。単なる画像処理で抽象化を追求するこのアプローチは筋が悪く断念しました。