遠野物語

様々なメディアの中から自分でテーマを一つ選び、そのメディアの解剖図鑑を作りました。 ここで言う解剖は「分解、分析して明らかにすること」の意です。 私は「遠野物語」をテーマに図鑑を作りました。

民俗学や妖怪が好きな方は知っているかと思いますが、遠野物語は日本民俗学の父と呼ばれた柳田國男が遠野地方(岩手県)の民話をまとめた本です。

遠野物語は、神々の話から、近所の人の噂話まで多種多様であり、人々のあるがままの暮らしに密接に関わっている物語という特徴があります。 発刊から百年以上を経っても、多くの人に語り継がれていると同時に、時代に合わせた形に進化している面もあり、 メディアとして興味深く、このテーマを選びました。

フィールドワーク
資料収集のために1泊2日で遠野まで行ってきました。 東京からは新花巻まで東北新幹線に乗り、そこから釜石線で1時間程度です。 観光資源として遠野物語を強く推していることが分かります。
作品と考察
遠野物語は、その文学性や民俗学的見地から多くの解説、研究がなされています。 それらとは別の切り口にしようと思い、ここでは「遊び」「形」「暮らし」「思い」の4つのテーマの軸で解剖図鑑をまとめました。
遊び
暮らし
思い

遠野で現地のガイドさんが「遠野の人にとっては遠野物語は出版されなかった方がよかったかもしれない」と話していたことが一番印象的でした。

外の人から見ると、興味深い不思議体験や家々の伝承話ですが、当人たちから見るといわゆる近所のゴシップ話なのです。 狭い村社会ですから当人達は誰の事かは直ぐに分かってしまうでしょう。

当時は身内の恥の面もあった遠野物語ですが、それが百年の時を経る内に、現在の遠野の人達の暮らしを支える一役になっているのは、 皮肉めいたものを感じてしまいます。

妖怪
遠野物語では河童、山男など色々な妖怪が登場しますが、「妖怪」とは一体どういう存在なのでしょうか。 遠野にフィールドワークに行った際に、そこで京極夏彦の講演があり、面白い話をしていたので紹介します。
妖怪とはデジタル化です。 形にできないけど無視できないようなこと・ものなどに名前をつけて生活に取り込んでいくことです。 自身の原体験はアナログなものですが、それを言葉に表した段階で多くのものが割愛されていきます。 そしてその言葉を聞いた人々がその割愛されたものを勝手に補っていくのです。
これは妖怪に限らず、メディアに関わる情報全てに言える話だと思いました。
本内容は武蔵野美術大学 通信教育課程 「メディア環境論」の講義で作成したものです

Prev Next